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森鴎外【高瀬舟】あらすじと感想

      2017/02/22

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あらすじ

森鴎外の名作・高瀬舟の舞台は江戸時代。島流しを命じられた京都の罪人を大坂へ護送する高瀬舟の船上です。

この高瀬舟に乗せられる罪人ですが、いわゆる根っからの悪党ばかりというわけではなく、大抵は一時の気の迷いで罪を犯してしまった者も多いのでした。

そんな罪人は見るのも辛いほど気の毒な様子をして、とても哀れに思わずにはいられないので、高瀬舟に乗るのは同心仲間からは嫌な役目とされていました。

 

ある日のこと、喜助という男が高瀬舟に連れられてきました。だがこの男はどうも様子がおかしいのです。

これから島流しにされるというのにいかにも楽しそうなのです。

これを不審に思った護送役の京都町奉行所の同心・羽田庄兵衛は、なぜそんな様子なのかを聞きました。

すると喜助は「私の半生はあまりに辛かったので、島流しにされても大して変わるまいと思うからです。お金まで貰えました」と語りました。

 

ふむ、なるほど。と思った庄兵衛でしたが、まだ腑に落ちないことがあります。

聞けばこの男は、弟殺しの罪で送られてきたのです。
ですがこの純粋そうな男が、弟を殺すなどという恐ろしい事をするのだろうか、という疑問がわきました。

 

庄兵衛は何故弟を殺したのか喜助に聞きました。
すると喜助の口から語られたのは、自害し損ねた弟を楽にしてやっただけ、という真実でした。

喜助は子供の頃に両親を亡くし、弟と2人で暮らしていました。しかし、弟が病気で働けなくなったので、貧しいながらも一生懸命働き、弟の面倒を見ていました。

 

ところが、ある日家に帰ると弟がのどから血を流し、苦しんでいます。聞けばこれ以上迷惑をかけたくないと思い、剃刀で自殺を図ったようなのですが、死にきれずに剃刀がのどに刺さったままになっていたのです。

弟は剃刀を抜いてくれと必死に頼みます。しかし、剃刀を抜けば出血で命を落とすことは間違いありません。喜助は悩んだ挙句、剃刀を抜きました。

弟は息絶えますが、そこを近所の人に見つかり、罪人になったといいます。それなのに喜助は「島流しなど今までの苦労に比べたら苦でない」と笑います。
そして「お上に居場所を作ってもらい、食べさせてもらえるのはありがたい」と答えるのです。

 

いえ、真実かは判りませんが、真実味は大いにありました。
仮に真実だとしたら、果たして喜助はこの高瀬舟に乗せられ島流しにされるほどの罪人なのでしょうか。

庄兵衛は喜助のしたことは人殺しと呼べるのか、自問自答してしまいます。けれどお上の決定をひっくり返すことは出来ない。

疑問に思いながらも、庄兵衛はただ粛々と護送の役目を果たすこと以外は出来ませんでした。
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感想

寂寥感の漂うお話です。この短編小説は2つのことを私たちに問いかけているように思います。その1つが喜助の行為が安楽死なのか、嘱託殺人なのかということです。

喜助のやったことは、弟を救おうとした善意の行動でした。苦しまず楽に死にたいと思う弟の願いを聞いた喜助を人殺しとするべきなのか、考えさせられました。

しかし他人から見れば殺したようにしか見えません。喜助の善意を証明することは不可能です。島流し以外に道はありません。
このお話に救いはなく、そこにはただ人の世の不条理があるだけです。ですが気分が悪くならないのは、物語の中の喜助の純粋さがあまりにも綺麗で、静かに光を放っているからです。

夜の暗さの中に煌々と灯る月明かりを眺めている。
そんな気分にさせてくれるお話でした。

もう1つは足ることを知るということです。喜助は島流しをありがたいといいました。生きていればそれで満足と思ったのでしょう。

 

人間は腹を満たせたら、蓄えを欲しがり、やがて欲望をどんどんエスカレートさせる生き物です。

どこかで歯止めをかけないときりがないのは分かっているのに、やめられません。庄兵衛は普通の役人ですから、それなりに欲望も持っていたでしょう。庄兵衛の驚きは私の驚きです。鴎外は人間の欲望の愚かさも示したかったのだと思います。

 

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Comment

  1. 名無しの・・・・ より:

    先日の 利根川の事件 知って すぐ 思い付きました
    感想が 同じ思いしたのを思い出します

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