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蟹工船【小林 多喜二 】あらすじと感想

      2017/02/22

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あらすじ

日本プロレタリア文学の筆頭として挙げられる、小林多喜二の「蟹工船」は、昭和4年に発表された中編小説です。

蟹工船というのは、北海道からオホーツク海にかけての漁場でカニを取り、備え付けてある設備ですぐにその身を加工して缶詰にしてしまうという、いわばカニ缶の工場船のことです。実際に存在していたのですが、作品内ではその中での過酷な環境に、労働者としてリアルに踏み込んでいく様子が描かれます。

北海道から出港する蟹工船には、大量の労働者が乗り込みます。多くは東北の寒村から赴いた出稼ぎの壮年労働者たち、年若い少年たち。ごくわずかですが、労働者運動の志を持つインテリ学生たちもまじっています。数か月もの長い航海を通して北の漁場を転々とし、カニを収穫しては、昼夜を問わずに長時間ぶっ通しの缶詰加工労働を強いられます。

出稼ぎの契約をした際とは、どんどん話が違って行き、労働環境は日々過酷さを増して行きます。食事の制限、睡眠時間の削減、さらには入浴なども削られ、衛生や栄養などすべての条件において労働者たちの環境は非人間的になってゆきます。それに追い打ちをかけるのが監督たちで、減俸や暴力を乱用しては、作業成績の向上のみを求めて労働者たちをすり減らして行くのです。

最低の労働環境ですので、病気やけがなどは日常茶飯事です。そのような中とうとう、一人の労働者が脚気のせいで命を落とします。

一人の漁夫が言いました。「俺達、死んでからも、碌な目に合わないんだ・・・」。
会社のあまりにも誠意のない対応に、彼らの不安はつのりその意識に変化が芽生えます。インテリ学生たちをはじめとして労働者たちは団結し、ストライキをすることで抵抗を試みます。

船舶であってそうでない、工場であってそうでないという、法のすきまを縫って違法をまかり通らせているこの蟹工船とその会社幹部たちに、護衛として並航している駆逐艦が鉄槌を下してくれるのではないか。そうした期待を持っての行為でしたが、騒ぎをとがめて乗り込んできた帝国海軍が逮捕したのは、他でもない労働者たちでした。

ここで改めて、労働者たちは国(軍部)と資本家たちとの結託を目の当たりにし、自分たちの犠牲の上に巨利をむさぼっている存在の正体を見るのでした。

それでも一度芽生えた「結束」は簡単には消え去ることなく、あきらめることなく再度蜂起した彼らの姿は、比較的暗いイメージのこの作品に最後の光を与えています。

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感想

この作品を高校で読んだ際には「発展途上であった日本の昔ばなし」という風に感じたのを覚えています。ですが近年、タイでエビ漁船に監禁され、違法労働に従事させられている少数民族のルポルタージュをTVで見た時に、「何だ、蟹工船は消滅してはいないじゃないか」と愕然としました。

また、このエビを安く輸入して消費しているのは欧米・日本という先進各国です。労働者の犠牲を踏みつけにして、それでのうのうとエビをむさぼっている私たちは、蟹工船のお偉いさんたちとどれほどの違いがあるのか、とショックを受けました。

「蟹工船」は発表から1世紀近く経っているのですが、この世界は過ぎ去った昔の話ではなく、リアルタイムで進行している現実の一部分としても読むことができるのです。2000年代以降、日本で・そして世界中で、この「蟹工船」の再評価が高まっているという話に、私は心から納得することができました。

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